恋愛ものを書かせたら右にでるものはいないのではないだろうか。
彼女は美しいものも危うげなものも儚いものも醜いものもなにもかも、
気がつけば、まるごとひっくるめて『恋愛』という波にのみ込み、甘美なスパイスにする。
恋愛の『気分』に浸るならこの人だ。
この作品は、彼女の作品の中では主人公が高校生、
舞台も日本ということもあってか比較的慎ましい、可愛らしい雰囲気を持つ。
決して作品のパワーが足りないわけではない。
それどころか、いくつになってもこの本を読むと恋愛をしたくてウズウズする。
女でよかった、と思う。
大人の、溺れるような恋愛もいいけれど、
大人でも子供でもないこの年代の、
どう動けばいいかわからず、ただ浸り、潜り、あわてて抜け出そうとするような、
憧れと誤解も満載な、
そんな恋愛もとても素敵だ。
いつまでも大切にしたい作品。